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古書 清巌
安土桃山、江戸時代前期の僧、清巌。清巌は天正16年にこの世に生を受けました。茶杓などの茶道に通じる道具を作ることに秀でており、また書画に優れていた清巌の墨跡は、茶掛けとして茶道における大切な装飾品として珍重されています。そんなお茶の道に通じていた清巌の有名なエピソードがあります。禅の弟子であった茶人、千宗旦に茶の席に招かれた際、清巌は予定の時間に遅れてしまい、千宗旦は「また明日に来てください」という伝言を使用人に残し、出かけてしまいました。それを聞いた清巌は「懈怠比丘不期明日」という言葉を茶席の板張りに残し、帰宅しました。この言葉の意味は「明日の約束など知りません。今日約束したのなら、今日の茶席を開くために力を尽くすのが茶人としての心ではないでしょうか」というもので、この言葉を見た千宗旦は清巌にお詫びしたのですが、先に遅刻という失敗をしたのは清巌なわけですので、現代風に言えばこれは「逆ギレ」というものでしょう。しかし、当時の茶の心や師弟関係を考えれば、どんなに理不尽なことがあっても師の言葉に背いたり機嫌を損なわせることはご法度だったのかもしれません。 そんな清巌でしたが、やはり茶の世界に精通し、現代にまで名を残している人物であるのは確かです。彼の作品に竹で作られた茶杓、「翁」というものがあります。翁とは年を取った男性、老人という意味の言葉です。能の翁の面などを想像すればわかりやすいでしょうか。清巌が作ったこの茶杓は「翁」という名に相応しい深い味わいを持っていて、茶の席で用いれば、他の茶器の中で静かですが人の目を引き寄せ魅了する存在感を放つことでしょう。千宗旦のエピソードを聞いて少々イメージが悪くなってしまったというかたもいるかもしれませんが、清巌が作り上げた独特の味わい深い光沢を放つ茶杓を見れば、やはり茶の世界に精通した人物だ、ということを感じると思います。 清巌は千宗旦とのエピソードから少々気難しい人物のように感じられます。しかし、それは茶という一つの芸術、精神を深く愛していたからなのかもしれません。客人として招いたものが例え指定した時刻に現れなくても、招いた側として、その人物のために誠心誠意、茶会の準備をする。現代の人々には少々硬く、「遅れてきた方が文句を言うのはおかしい」と考えるかもしれませんが、清巌が考えていた茶の心はとにかく相手を思い茶をたてる、という敬いの精神だったのかもしれません。骨董買取・清巌の古書はご自宅にありませんか?